ぐるぐる

日記

10/27日記

今日はもう仕事を終えた時点ですべてを諦めた。先輩社員が異動することになったのだが、その最後の挨拶でひどく落ち込んでしまった。その先輩は挨拶の際、かなり緊張しているように見えた。あまり喋っているところを見たことがない人だった。私自身、同じ場所にいながら仕事で2、3回会話した以外は接点がない。2年近く一緒にいたのに、だ。先輩は長い間世話になったことを述べる。いままでお世話になりました、と言った。それから、こう言った。やる気がないように見える。結婚したら辞めるんだろう。彼氏のことしか考えていないんじゃないか。こういうことを、言うのはどうかと思います。退職を考えていましたが、部署異動することになり、その選択はしませんでしたが。記憶だから、間違っているかもしれない。先輩は言い淀みながらも言い切った。まばたきを多くしていた。人前で話すのが得意な人ではないんだろう。勇気を振り絞ったのだと思う。そんな先輩を私はすごいと思った。私ならどんなに辛くても言えない。きっと言わず、静かに去るだろう。けれど、先輩は言った。その事実に私は胸が震えた。退職を考えるほど、辛いと思いながら働いていたこと。それを言われた人とその後もコミュニケーションを取ってきたこと。仕事だから、そう片付けるにはあまりにも辛いことだ。想像でしかない。私は上司がそんなことを言っているなんて知らなかった。そういう全時代的というか、時代錯誤というか、古い女性観で部下を見て、言う人たちだと思っていなかった。はっきり言って、幻滅した。そういうことを言わない、いい上司だと思っていた。そう見えていただけだった。私には見えなかった。先輩には見えた。見えてしまった。それでも、働いていた。私は先輩を尊敬する。そして、気づかなかった自分を糾弾している。気づけば、なにかできていたのかもわからないけれど、少なくとも、なにかしようとはしたはずだ。そうあるべきだとも思う。先輩にそう言った上司が誰かはわからない。けれど、それを言った人が存在することは部署全体に伝わった。先輩はこの場所を去る。けれど、楔は打たれた。今後、このような物言いをする人はいないだろう。よっぽどな人じゃなければ、言わないはずだ。先輩は自分のために言ったのか、その言葉を言い放った人に言ったのか、わからない。でも、その言葉は残り続ける。残り続けるべきだ。少なくとも、それを覚えている人がいる限り、同じ思いをする人はいなくなる。先輩は、間接的に将来同じ思いをする人を救ったことになる。私は先輩を尊敬する。そして私も先輩のように、そして先輩があのように言わなくて済むようにしなければいけない。それが、勇気を奮ってくれた人へできることだと思う。

 

3941人。