ぐるぐる

日記

1/5日記

今日が今年最初の仕事の日、つまり仕事初めなわけなのだけど、福島県にいる。出張でだ。

新幹線に乗るのは久しぶりだった。お正月に出掛けた人たちも乗っているのか車内は混雑していた。その割には静かで、みんなお正月にはしゃぎすぎて疲れたのかな。途中、破魔矢を持ったこどもがいて、それが妙に似合っていたせいか、なんとなく得した気分になった。いいものをみれた。こどもに破魔矢はよく似合う。

そして新幹線は東北地方へ入り、かの有名な書き出し、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」を思い起こさせる景色があった。移動中は本を読んでいたけれど、しばらく見入ってしまった。真っ暗なトンネルと陽光を反射させる清潔な雪が目に嬉しい刺激をくれる。川端康成の「雪国」の冒頭はどちらかと言うと、「夜の底が白くなった。」のほうが印象的な比喩として私は思っていたが、どちらも良いなと思いを改める。前文があってこその比喩の輝きだから、当たり前だけどどの文も疎かにしちゃいけない。「雪国」も気が向いたら再読したい。日記を始めてから再読したい作品が増えたような気もする。文章を書いているといつもそうだけど、ふとした言葉が引き金になってある作品を思い出すことが多いから、つい引っ張られて読みたくなってしまう。文章を書くことも好きだけど、同じくらい読むのが好きなんだなと改めて思う。

福島県はもう雪が降っていて、一年を通してほとんど雪が降らない地域に住んでいる者としては、驚きを隠せない降雪量だった。まず雪が積もっていることに驚いてしまう、そんなことでも私からすれば珍しい光景だった。少し興奮した。「雪やこんこ」の「犬は喜び庭駆け回る」の気持ちとほとんど同等と言っていい。が、それも僅かな時間だった。雪が積もった道路は凍り、非常に滑りやすくなっていた。アイスバーンというやつだ。これが本当に怖い。普段歩いている地面がいかに安定していたかを思い知らされる。一歩一歩に集中して歩くなんて初めてのことかもしれなかった。というわけで、はじめての光景にわくわくしていた気持ちも早くにしぼみ、あとは平均台の上に乗ったようにおっかなびっくり歩いていた。地元の人たちの颯爽とした歩みには慣れと恐れのなさがあった。長靴というアドバンテージもあったけれど、敢然と進んでいくさまはかっこよかった。

 

有言実行、ヴァージニア・ウルフの「波」を読みはじめた。これ、初読でわかる人いるのかな……とびくびくしながら読んでいる。まだ三分の一も読めていないからわからないけど、空をつかむ感じで読み解けてる気が全然しない。演劇っぽさがあり、けれどその意図もまだ掴めていない。全体を読めばわかるのだろうか。感想を書くのに骨が折れそうだということだけは、わかる。気ままなホテル暮らしなので、のんびりと自分のペースで読み進めていこう。