ぐるぐる

日記

4/15日記

乗馬クラブに通っている友人に誘われて体験乗馬をしてきた。私が行ったのは、山奥にある乗馬クラブで、天気はあいにくの雨。だが事前に電話をもらっていた段階から雨でも基本的にはできるとのことで安心して現地へ向かった。友人の車で乗馬クラブへ着く。そこにはすでにかなりの数の車が駐車されていて、受付の建物の横にある馬場にはすでに幾人もの人と馬がいて、円になるよう設置された柵をぐるぐるとまわっている。自分もああいうことをするのかと緊張しはじめていた。受付を済ませ、エアバッグやブーツ、ヘルメットを身につけるとあっという間に案内され、厩舎へ向かった。今日私を乗せてくれるという黒鹿毛の元競走馬ヒシヤマトは、一度すでに誰かを乗せていたらしく、濡れた状態で自分の部屋に寝転がったようだった。「ヤマト、ごろんした?」「そうなの、やられちゃった」などと職員同士が会話しているのを聞いていたが、私はそれよりも実物の馬の大きさに圧倒されていた。思わずじろじろ観察してしまう。自分の身長をゆうに超える体高、身振りひとつひとつがその存在を肌に感じさせ、くしゃみも豪快。馬のくしゃみは人間と違って、声が混じらない。空気も鼻から出すのが主なようで、くしゃみをするとぶるぶる鼻の穴がこまかく揺れる音がする。挨拶を、と職員に促され、額のあたりを撫でる。毛は短くかなりハリのある質感だった。豚毛の洋服ブラシを持っているけど、あれよりも硬い。たしか革靴のブラシが馬毛を使っていた気がするが、それよりも硬いような印象を受けた。額は毛皮の下がすぐ骨。当たり前だけど、あたたかかった。たてがみはそれなりに長く、ちょっとごわついていた。マネキンのカツラからプラスチックの質感がすこし抜けて、砂埃でまぶされた感じ。伝わってる? 挨拶を終えると馬場に出て、すぐに馬に乗ることになった。台座に両足で乗り、たてがみと手綱を一緒に左手で掴む。右手は鞍についた金属の手すりにつかまる。左足をあぶみに掛け、右足をあげて鞍に跨る。不安定と安定の両方を一気に感じる。馬に跨っているわけだけど、同時に地面と繋がっている感じ。動物に乗っているからこその感覚なのかもしれない。両足をあぶみにかけ、職員の指示の元、姿勢を正していく。馬の体高プラス自分の腰から上の高さが合わさり、目線が高い。なのに意外にも怖くはなかった。職員は、最初は怯える人も多いと言っていた。何度か指摘を受けながら、頭と腰とおしり一直線にして、なるべく重心を下に置くようにする。かなり意識しないとできない姿勢で、少し苦労した。職員の合図とともに、歩きはじめた。ハミと呼ばれる馬の口に付けられた器具に繋がった紐で職員が誘導してくれていたとはいえ、突然の揺れはかなり緊張感が高まった。内腿で鞍の上から馬の背中を挟むようにしてなるだけ多く身体を馬に密着させ、安定した状態を作り出そうとしたが、普段使わない筋肉だからかすぐに限界がきて、ガクガクと腿が笑っていた。職員とおしゃべりをしながら柵の中の何周かまわり、すこしずつ身体から力が抜けていくのがわかった。余裕が出てきて、片手を手綱から離したりもした。と、慣れてきたところに職員は「じゃあ、ブレーキの練習をしましょうか」と言って、手綱を自分の身体側に引っ張るよう指示される。思い切り引っ張ると馬が嫌がるんじゃないか、暴れないか、不安に思いながらゆっくり手綱を引く。馬は幾歩か進んだ後、ほとんど揺れもなく停止した。この瞬間の感動。自分の意思が、馬に伝わった。もちろん、馬からしてみれば何度となく繰り返されてきた指示であり、その意味も理解していて、だからいつも通りそうしただけだと思う。でも、私がそれを行い、馬に伝わった。停めたいの?じゃあ、停まるよ、というように。コミュニケーションが成立した瞬間だった。続いて、停まった馬にまた歩き出してもらうため、あぶみに乗せた両足のかかとで馬の腹をそっと押す。馬の腹は背中から下に行けば行くほど敏感になり、意思も伝わりやすいらしい。事実、ほんの少し足で触れただけでまた歩き出してくれた。そこからは停止と再度進行の繰り返し、ゆっくりした停止の仕方と歩行速度を緩めてもらうやり方、これらを何パターンか繰り返すと体験乗馬は終わった。楽しかった。最後にお礼で首を愛撫し、馬は厩舎へと帰っていった。あっという間だった。本当に経験してよかった、と思った。

これは私を乗せてくれたヒシヤマトさん。

長老と呼ばれるくらい歳をとっているらしい。年齢を聞くと、31歳だそうだ。普通に歳上だった。敬語を使うべきだった。濡れた身体をタオルで拭かせてもらい、別れた。

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1197人。